『天然ビタミンCを軽視しないで』

ビタミンC食品は自然界ではとても少ないため、サプリメントなどで補給する方も少なくないでしょう。実際に、私は単体でのサプリ投与については慎重な見解を持っていて(治療は別)、そうでありながらもビタミンCだけはやはり最低1,000mg/日は必要であると思っています。

ビタミンC1,000mgを食事のみで摂取するのは非常に困難のためサプリメントに頼らざるを得ないと思っています。また、伝統社会ではさほどビタミンC摂取量は要求されません。それこそ食事から摂取できる100~200mg/日であればおそらく事足ります。 しかし、私たちの住む文明ではあらゆるストレス(環境汚染、メンタルなど)がかかっているため、到底100mg/日では欠乏症に陥ることでしょう。

ところが、市販ビタミンCサプリのほぼ99%は合成ビタミンCです。いわゆるアスコルビン酸です。合成によるアスコルビン酸は確かに天然のものと化学構造式は同じですが、厳密に言うと少し違います。

というのは、天然ビタミンCはフラボノイドなどの植物成分との複合体でビタミンCを形成しているからです。アスコルビン酸単体で存在することはありません。(ちなみに合成ものはSynthetic Vitamin Cといわれ、Pubmedなどの論文検索サイトでも普通に上がってきます)

そのため、「アスコルビン酸=合成もの」と揶揄する科学者も結構います。ただし、一般にビタミンCの定義がアスコルビン酸とされていますので、アスコルビン酸とビタミンCが同等のものとして扱われるのは仕方のないことでしょう。

市販ビタミンCが合成ものだからといって、私はそれが危険だとか、偽物だとかと煽る気はありません。なぜなら、たとえ合成アスコルビン酸でも数知れないほど多くの効果が報告されているからです。 とはいえ、本来の天然ビタミンCは有機物との複合体で形成されており、合成アスコルビン酸にはない、さまざまな利点があります(後述)。

天然ビタミンCのデメリットは単に入手しづらい、食材から摂取しようとすると量が少なく効率的でないというだけです。

市販のビタミンCはほぼ99%合成のアスコルビン酸ですが、これは水素添加されアセトンで処理されたGMO(遺伝子組み換え作物)由来コーンシロップを原料に合成されています。当然コーンシロップにビタミンCは含まれていません。古典的な製法の場合、これらの糖に塩酸などを加えて、構造上のビタミンCを合成していきます(実際にはいろんな方法があります)。

※NON-GMO(遺伝子組み換えでない)と書いていても、それが何かの天然抽出物であるという説明がない限り、GMO由来でないだけでコーンシロップ原料であることは変わりありません。 天然ビタミンCの利点は生体利用率が合成ビタミンCよりも高いことです。実際に、合成アスコルビン酸と、これに相当するビタミンC量が見込まれたアセロラジュースとの生体利用率の比較試験では、天然ビタミンCの方がより長く体内で維持され、天然の方がビタミンC尿排泄量も少ないことが判明しました(Biol Pharm Bull. 2011;34(11):1744-7)。

また、血液や肝臓でより多く利用可能であることがわかっています(J.A.Vinson,Royal Society of Chemistry, 1989,P404)。

合成アスコルビン酸は天然に比べると体内での半減期が短く、一方、天然ビタミンCの吸収は合成アスコルビン酸に比べればゆっくりと吸収され、細胞への持続時間も長いのです。

そもそも、私たちは進化上、単体のアスコルビ酸を摂取してきたわけでなく、あくまで食材の中で存在している植物フラボノイドなどと複合体の形でとどまっている天然ビタミンCを摂取してきた歴史があります。

つまり、合成アスコルビン酸は天然のものと化学構造上は同一でも、単体ではなく天然の食材から摂ることでビタミンCと複合体を形成しているフラボノイドやミネラルなどによって、生体利用率(バイオアベイラビリティ)に大きく影響をしているのです(Nutrients. 2013 Nov; 5(11): 4284-4304)。

コーンシロップのおかげで、本来自然界では入手しづらかったビタミンCがアスコルビ酸という単体の形で安価な値段で入手しやすくなった恩恵は確かに大きいといえます。よって、たとえGMO由来でも構造上に変わりはないため、その効果はきちんとあります。

しかし、一方で、食品の安全性という視点では、GMOの影にはまだ不明な点が多いことも考える必要があるかもしれません。また天然で存在するフラボノイドなどとの複合体でビタミンCを摂取することは生体利用率を向上させるというとても大きなメリットがあります。 昨今、ビタミンCはサプリ(合成アスコルビン酸)で摂っているから大丈夫という感覚の人が増えたような気がしますが(それはそれでいいと思いますが)、天然ビタミンCの生体利用率などのメリットや希少価値を考えるのなら、たとえ少量のビタミンCであってもやはり食材から栄養素を摂取するという重要性を忘れないで欲しいのです。

それがたとえ50mgや100mgという少量のビタミンCであっても、天然の形からビタミンCを摂取できるというのは生体にとって非常に価値のあるものだということを再認識していただきたいです。

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WRITER

吉冨 信長(よしとみのぶなが)

1977年生まれ (株)コミディア代表取締役 栄養カウンセラー、分子栄養学セミナー講師、日本脂質栄養学会会員、日本微量元素学会会員

2000年東京理科大学卒業後、SE業界へ。
SE業界を引退後、2007年青果業界へ転職し、2013年から食と栄養に関する健康情報をSNS等で日々発信し、講演会やセミナーではいつも満員となる人気講師に。

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