『低フェリチンはビタミンC不足の指標でもある』

鉄の勉強会で必ず説明しているのが、「低フェリチンは鉄不足を表すだけでなく、ビタミンC不足の指標でもある」ことです。 まず、血清フェリチンは鉄欠乏を表す最も妥当な指標です(Addison SM,1972 ; Cook DJ,1973)。

基本的なことですが、鉄が「お金」だとしたら、「お財布」として例えられるヘモグロビンにお金がきちんとあっても、油断できません。なぜなら、「金庫」であるフェリチンにお金(=鉄)が入ってないと、将来の生活が危うくなるからです。

フェリチンの役割は鉄の貯蔵であり(貯蔵鉄)、肝臓・脾臓・小腸粘膜に蓄えられたフェリチンが取り出されて、鉄不足や貧血にならないようにしています。

(フェリチンは基本的に全ての細胞に存在するタンパク質で、トランスフェリンによって運ばれた鉄を細胞内に貯蔵し、鉄が必要な場合は速やかに利用できるように調節しています。)

私たちの体のエネルギー発電は、ミトコンドリア内膜の電子伝達系で最終的に合成されますが、このときに鉄-硫黄クラスターという古典的なタンパク質を介して電子が運ばれる必要があります。この鉄-硫黄クラスター構造の完成度は、細胞内の鉄含有量に依存しています。

さて、ビタミンC(アスコルビン酸)がフェリチン合成に関わっていることは以前から知られていました(Exp Eye Res. 1997 Mar;64(3):413-21.)。

基礎実験でも、アスコルビン酸をほとんど含まない細胞に比べて、アスコルビン酸を与えた細胞によるフェリチン合成は著しく高いことがわかっています。 アスコルビン酸は細胞内でフェリチン・タンパク質を翻訳(=合成)する際に、フェリチン遺伝子の発現を直接作動させることがわかっています(Journal of Biological Chemistry,270, 2846-2852,Feb 10, 1995)。

そもそも鉄分食品を摂取するときビタミンC(アスコルビン酸)を加えることで、鉄の吸収がアップすることは周知の事実です。その吸収率は2.9倍も増加することなどが知られています(Fidler,2009)。

ところが、アスコルビン酸はそれだけでなく、鉄を貯蔵するフェリチン・タンパク質合成の発現にも遺伝子レベルで関わっているのです。 さらにそれだけでなく、アスコルビン酸は、細胞内小器官リソソームによるフェリチン・タンパクのオートファジー(=リサイクル化)を防ぎ、できるだけこの貯蔵鉄タンパクの分解を遅らせるようにし、フェリチンの安定化にも働いてもいます(遊離した鉄は潜在毒のためこうして守られているのです)。

このように、アスコルビン酸はDNAそしてmRNAから翻訳される効率やスピードを高めることによってフェリチン合成を促進させています。

臨床でもアスコルビン酸を投与されたグループと投与されなかったグループではフェリチンの合成度合が全く異なります。さらに興味深いことに、逆に鉄過剰症の人にアスコルビン酸を与えると、今度はフェリチン値が低下し、正常な鉄量を維持できるようになります(J Clin Pathol. 1982 May;35(5):487-91)。

低フェリチン値だから鉄欠乏だとすぐに判断して安易に鉄投与のみに走ると、なかなか上がらない人も多くいます。

以上のように、低フェリチン値は体内ビタミンCの低下の指標でもあります。ビタミンCは水溶性のため排泄しやすいので、ビタミンCが枯渇した細胞内濃度を正常に回復させるには時間がかかります。よって、長期的な視野で栄養改善に取り組むことが必要です。 ※フェリチンは炎症の指標でもありますので、勝手な解釈をせずに必ず専門家にみてもらうこと。

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WRITER

吉冨 信長(よしとみのぶなが)

1977年生まれ (株)コミディア代表取締役 栄養カウンセラー、分子栄養学セミナー講師、日本脂質栄養学会会員、日本微量元素学会会員

2000年東京理科大学卒業後、SE業界へ。
SE業界を引退後、2007年青果業界へ転職し、2013年から食と栄養に関する健康情報をSNS等で日々発信し、講演会やセミナーではいつも満員となる人気講師に。

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