グルテンの正体!小麦グルテンが炎症を起こす理由

グルテンといえば、このブログをご覧の方はもうご存じかと思いますが、小麦のタンパク質の一種です。

今日はグルテンについて、基礎をおさらいして掘り下げていきましょう!

小麦食品の例

グルテンを含む小麦食品には、パン、パスタ、マカロニ、ビスケット、洋菓子、スナック菓子、うどん、そば(十割以外)、団子、一般のカレールー、米粉パン(グルテン含有の場合あり)、餃子・しゅうまい、揚げ物の衣などがあります。

 

そばは小麦粉がメインのものが多く、また米粉パンも、米粉だけのパンとは限らず、グルテンを加えているパン屋さんもありますのでこちらに記載しています。

グルテンって何?

冒頭にお話したとおり、グルテンは小麦のタンパク質の一種で、精製小麦の成分に含まれるタンパク質のうち80~85%をグルテンが占めています。

 

しかし「グルテン」とはあくまでも、グリアジンというタンパク質と、グルテニンというタンパク質がつながった、2つのタンパク質の総称で、「グルテン」というタンパク質そのものが存在するというわけではありません。

グルテンの構造

グルテンの構造は下図のようになります。

ゴムのような弾性があるタンパク質のグルテニン(グルテリンの一種)が骨格を作りその網目状の間を、ベトベトする粘性・伸ばすことができる伸展性のあるタンパク質のグリアジン(プロラミンの一種)が埋め尽くしている、という構造です。

 

グリアジンとグルテニンの構成比はだいたい半分半分。

そして、グルテンによる影響は、実はほとんどが、ベトベト・伸展性のあるグリアジンによるものとなります。

プロラミンの種類と『グルテンフリー』の定義

プロラミンには、グルテンとして影響を与える小麦のグリアジンのほか、

・大麦のホルデイン

・ライ麦のセカリン

・トウモロコシのゼイン

・オート麦のアベニン

などがあります。

 

そしてこの大麦、ライ麦、オート麦といった麦系は、だいたいすべて小麦のグリアジンに構造が似ています。(トウモロコシのゼインだけ少し違います)

 

そのため、アメリカのFDAやCODEX委員会では、小麦のグリアジンだけではなく、似た作用のある大麦のホルデイン、ライ麦のセカリン、オート麦のアベニンなどと、それぞれのグルテリンを含めて、これらすべてを除去したもの、または含有していない食品を『グルテンフリー食品』と定義しています。

セリアック病とは?

さて、セリアック病は、プロラミン(特に小麦のグリアジン)に対してよく反応する病気で、欧米人の約1%が罹患している自己免疫疾患です。

 

ちなみに自己免疫疾患とは、免疫反応が過剰になってしまい、敵でない自分自身の正常な組織や細胞まで攻撃して傷つけてしまう疾患です。

セリアック病では、腸の透過性(リーキーガット)、小腸の絨毛の萎縮と破壊、粘膜炎症などを引き起こすということが分かっています。

小麦のグリアジンに過敏に反応するしくみは?

では、なぜ小麦のグリアジンが炎症を起こしてしまうのか、見ていきましょう。

腸の上皮細胞で栄養を吸収するときに、グリアジンの未消化のペプチドがCXCR-3という受容体に結合してしまうと、このまま取り込まれ、この上皮細胞内のゾヌリンというタンパク質を放出させます。

すると、ゾヌリンがまた上皮細胞の特異的な受容体に結合し、新しい化合物をつくります。

 

この新しい化合物が、なんとこのタイトジャンクションという、上皮細胞どうしをつないでいる接合因子を分解してしまい、上皮細胞間に隙間ができてしまうのです。

そして、この隙間に未消化物が来てしまうと、消化されずにそのまま通過して、毛細血管まで届いてしまう。

すると免疫細胞が反応して「これは異物じゃないか!?」と炎症を起こしてしまうのです(腸の透過性/リーキーガット)

 

こういった機序で、グリアジンは上皮細胞に隙間を開けて、リーキーガットを起こして炎症を起こしてしまう流れがあるのです。

小腸の正常な絨毛と、セリアック病の絨毛

ではここで小腸の正常な絨毛と、セリアック病の絨毛を見てみましょう。

正常な絨毛には左上の図のようにひだができているため面積が広く、栄養吸収効率がいいのが特徴です。

一方、右上のセリアック病の絨毛にはほとんど突起がなく、吸収の面積が少ないので吸収不良が必ず起き、さらに炎症が起きやすいのです。

グルテンフリーダイエット(GFD)の効果

ここではグルテンフリーダイエットの研究について見てきましょう。

 

たとえばスウェーデン1031人によるグルテンフリーダイエット実施後のアンケートによると、関節痛以外の症状、例えば腹痛とか膨満感、疲労、鬱、頭痛、胸焼け、発疹、抜け毛などがほぼ全て緩和、または改善した、ということが報告されています。

 

他にも、グルテン感受性患者、セリアック病患者、消化不良対照患者にグルテンフリーダイエットを実施すると、なんとグルテン過敏症による症状が数日以内になくなった、という報告もありました。

その他、グルテンフリーダイエットの効果は、各国がいろいろ報告しています。

ところが・・・グルテンフリーダイエットの落とし穴!

ところが、そんなグルテンフリーダイエットにも落とし穴があるので注意が必要です。

それは、このグルテンフリーダイエットの食事をすると、ビタミンD、B12、そして葉酸、鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルなどの栄養不足に陥りやすいということ! これはイタリアの研究で報告されています。

 

理由は、食事がグルテンフリーダイエット用の加工食品に集中してしまうから。

グルテンフリーという恩恵はあるものの、加工段階でビタミン、ミネラルが少なくなり、デメリットの方が高くなってしまう可能性もあるのです。

 

最近では日本でも、グルテンフリーダイエット(GFD)が流行っており、このように欧米からくるものは、ファッション性やトレンド傾向などでつい真似したくなってしまいますが、こういう食事療法ではぜひ注意してくださいね。

誰もがグルテンを避けるべき!?

では、誰もがグルテンを避けるべきなのでしょうか?

それに対しては、このような考えを持っていただきたいと思います。

 

まずはグルテンフリーをやってみて、これまでの症状を確認して、もし症状が良くならないなら、グルテンのせいではないとわかります。

逆にもしグルテンフリーをやって症状が改善したり、調子が良くなったり、または、終わってしばらくして再度小麦食品を食べたら調子が悪くなった場合は、やはりグルテンの影響だった、ということが分かるでしょう。

 

ということで今回は、人によって、さまざまな不快な症状を起こす「グルテンの正体」ということで、グルテンの基礎をおさらいしてみました。

その他の腸の健康に関する記事は、こちらもぜひご参照ください!

https://www.eiyou-lab.jp/category/intestine/

WRITER

吉冨 信長(よしとみのぶなが)

1977年生まれ (株)コミディア代表取締役 栄養カウンセラー、分子栄養学セミナー講師、日本脂質栄養学会会員、日本微量元素学会会員

2000年東京理科大学卒業後、SE業界へ。
SE業界を引退後、2007年青果業界へ転職し、2013年から食と栄養に関する健康情報をSNS等で日々発信し、講演会やセミナーではいつも満員となる人気講師に。

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