銅過剰とピロリ菌

生体に銅レベルが異常に高くなると、胃粘膜表面のヘリコバクター・ピロリ菌のコロニー形成を促進させることがあります。

これはTFF1(トレフォイル因子)という胃粘膜の保護や胃がん抑制のあるタンパク質に過剰な銅が結合すると、この銅-TFF1の錯体がピロリ菌のコロニー形成を促進してしまうからです(PLoS One. 2013; 8(11): e79455)。

実際に、上部消化管症状のある4〜16歳の子ども395人を対象にしたアルゼンチンの研究で、ピロリ菌感染が陽性だった子どもは銅レベルが高いことがわかりました(J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2010 Jul;51(1):85-9)。このとき亜鉛や鉄のレベルとの相関はありませんでした。

また、日本の久留米大学の20歳以上7,389人を対象にした研究では、海藻類やお茶の摂取が多いほどピロリ菌感染が比較的少なく、鉄や亜鉛の摂取が多いほどピロリ菌感染陽性になりやすい指摘をしています(Kurume Med J. 2000;47(1):25-30)。ただし、これはあくまで相関のため、直接的な原因かどうかは不明です。

過剰な銅はノルエピネフリン(ノルアドレナリン)の合成を促進させます。これはドーパミンからノルエピネフリンを合成する酵素の補因子として銅が働くからですね。

イギリスの研究では、実はこのノルエピネフリンの過剰がピロリ菌の増殖を促進することをつきとめています(Helicobacter. 2009 Jun;14(3):223-30)。これはとても重要な報告です。さらに興味深いことに、ノルエピネフリンはエピネフリン(アドレナリン)よりもピロリ菌増殖を促しています。

銅のレベルは特に毛髪に反映されやすいので、銅レベルを確認しておくことは現代人にとって必要かもしれません(分析は他ミネラルとのバランスでも判断します)。

銅レベルが高いということは単に食事性が要因というよりは、炎症や酸化ストレスにより上昇している可能性もあります。 以上のように、過剰な銅はピロリ菌の増殖とコロニー形成を促進してしまいますので注意が必要です。

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WRITER

吉冨 信長(よしとみのぶなが)

1977年生まれ (株)コミディア代表取締役 栄養カウンセラー、分子栄養学セミナー講師、日本脂質栄養学会会員、日本微量元素学会会員

2000年東京理科大学卒業後、SE業界へ。
SE業界を引退後、2007年青果業界へ転職し、2013年から食と栄養に関する健康情報をSNS等で日々発信し、講演会やセミナーではいつも満員となる人気講師に。

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